兼子先生は千夏の肩を抱くと、「大丈夫？」とあたしに対する声とは正反対の優しい言い方でなぐさめている。

兼子先生の目があたしをまた見る。

「盗んだお金を返しなさい」

「え……？　だって……」

「山本さん、人様のお金を盗むなんて絶対してはいけないことなの。分かるでしょう？」

「あ、あたしは盗んでいません。それは千夏もわかってくれたはずです！」
半ば立ち上がりながらあたしは言った。


どうなってるの？


昼休みに千夏は『信じる』って言ってくれた。

あれで終わりじゃなかったの？

「先生、いいんです。あたしが置き忘れたのが悪いんですから」
涙をこらえながら、千夏が兼子先生に言う。


声が震えている。