「山本さん。荷物を持って指導室へ」

「え?」
言われた意味がわからなくて聞き返すと、兼子先生は少しイラッとした表情を見せた。

今年50歳で独身。

時折ヒステリーになることから、『ヒスばぁ』とあだ名がつけられているらしい。

「聞こえなかったの? いいから、早く荷物を持って指導室へ」
そう言い捨てると、兼子先生は踵を返して出て行ってしまった。


なんだろう……。


混乱したまま席に戻ると、遙香が、
「帰ろっか」
と、声をかけてきた。

瑠奈もカバンを手に立っている。

「あ……」

どうしよう。

今のこと、話したほうがいいのかな……。


でも、心配させちゃうかも。