空耳かと耳を澄ますと、
「こっちに走って行くの見えたよぉ」
と、楽しそうに笑っている。


そんな……。


なんでここにいるってわかるの?

チカラは使わないって約束したのに。

残りの力をふりしぼって坂道をあがる。

もう、あたりは真っ暗で少し先もよく見えない。

虫の声さえも恐怖を助長する。

ふと、右手に大きな建物が見えた。

あと15分くらいなら、ここなら隠れられるかも……。

足を引きずるようにしてその建物へ近づいた。

暗くて入り口がわからない。

壁伝いに歩くと、小さなドアが見えた。

たぶん裏口なのかも……。