「鏡刑事は、今いらっしゃいません」
その声が、私を打ちのめした。

「そんな……」

「君、大丈夫か?」

クスリでもやっていると疑っているのか、いぶかしげに間合いを詰めてくる警察官。

これで捕まっても構わない。


でも……。


時間を見るとまだ10分も経っていなかった。

「ご両親に連絡をとろう」

「えっ?」

「それまでここで待っていてもらうから」
そう言うと、メモを取り出す警察官。

私はきびすを返して走り出した。

「ちょっと君!」

追いかけて来る声にも振り返らずに、外に飛び出す。

あそこで待たされているうちに絶対に見つかってしまう。