ヘッドホンを耳にあてた男性と肩がぶつかった。

倒れてしまいそうになるのをこらえる。

舌打ちして通り過ぎてゆく背中に、
「ごめんなさい……」
と、つぶやいた。

また、歩き出そうとした私は、向こうから歩いて来る人々の中に制服を着た女の子がいるのを見た。

ゆっくりと歩く女の子は、私の学校の制服を着ている。

その胸元にスカーフがないことに気づいた私は、それが誰なのかを知った。

うつむき加減で歩いて来た女の子は、私の前で立ち止まる。

「純子……」

あえぎながら言った名前に、女の子が顔を上げた。

「美鈴。こんばんは」

純子は静かに私の名前を言った。