「はい」
私はうなずいた。

お父さんもお母さんも、大学は出ていない。

なのに、どうして大学のことがわかるんだろう?

一度聞いてみたいけれど、それがイヤミになるのはわかっている。

ふたりとも大学に行けなかった劣等感を、私で満たしているのだ。

「今度の模擬テストはいつ?」

模擬テストとは、塾でたまにおこなわれているテストのこと。

全国展開している大手の塾なので、全国ランキングや偏差値が毎回出る。

「来週の日曜日です」

「ええ!? 時間がないわね。こないだ理科が悪かったでしょう? ちゃんと復習してるの?」

お母さんはまるで自分のことのようにあせっている。

「お母さん?」

「数学はまぁ大丈夫として、心配なのは国語もね」