「だってさ」

「そんな……」
反論しようと開きかける口を、美鈴は手のひらで制した。

「千夏が机の中に財布を忘れた、と言うので私たちは取りに戻りました。しかし、山本さんは、教壇の付近でその財布を持って立っていましたよね？」

「でも、それは」

「それは、千夏の財布を机から盗って持ち去ろうとしていたからだと思いますけれど」

「違う！」
あたしは叫ぶように言った。
「あたしはそんなことしてない。盗んでなんかいない」

「あんたさぁ。下手だね」
渚があたしに顔を近づける。

「下手？」

「やるならもっとうまくやんなよ。それに、千夏の財布盗るなんて、頭悪いとしか言いようがない」