「で、なに?」
そう言うと、千夏はあたしを見た。


その目がおもしろがっているように見えた。


「あたし、昨日財布は見つけたけど、盗んでなんていないよ」

「は?」
聞こえていたはずなのに、千夏はそう言う。

「だから、あたしは……泥棒なんかじゃない」


そう。


あたしはただ財布を見つけただけ。

それなのに、あんなふうに黒板に書くなんてひどすぎる。

千夏は声を出して笑った。

「あんた、それ本気で言ってんの?」

つられて美鈴や渚も笑う。

笑っている意味がわからないあたしは、うん、と大きくうなずいた。

「忘れ物をして取りに帰ったの。そしたら、教壇のところに財布があったの。それだけ」