コールが3回鳴ったところで、相手が出た。

『はい、柴田です』

女性の声がした。

千夏の声のようにも思えるし、お母さんの声にも聞こえる。

「あ、あの。私、1組の橘 遙香と申しますが……」

『え?』

「柴田千夏さんはいらっしゃいますか?」
そう尋ねると、受話器の向こうから笑い声が聞こえた。

『やだ。あたしが千夏。誰だと思ったの?』

「ああ……。突然ごめんね。今忙しい……かな?」

あまり親しくないから、どんな話し方をしていいのかわからない。

『ううん。ヒマだよ。音楽聞いてた』