じっと息を殺していると、生臭いにおいが鼻に届いた。

耳元で、山本の声がする。

「同じ気持ちを体験しようね」

その言葉を聞いた次の瞬間、私の体は勝手に立ちあがろうと動き出した。

必死でうずくまろうとするが、意志に反して片膝をついて起き上がる体。

「どうして!?」

「ほら、同じように作っておいたから」

山本が指さす方には、スカーフで作った丸い輪っかがぶらさがっている。

「イヤよ……なんで? なんでこんなこと……」

「なんで?」

山本が首をかしげた。

その間にも体が勝手に輪っかに向かって歩き出す。