「私はなんにも悪いことしてないよ? どうして信じてくれなかったの?」

また1歩。

「だって、だって! あんな状況でどうやって信じるのよっ」

「話を聞いてくれなかった」

1歩。

「ごめんなさい。信じるから、信じるから許して。許してぇ……」

壁からくずれるように床に座りこんだ。

ガクガクと膝が震えて、もう立つこともできない。

「もう遅いの。だって、あたしは悪魔に命をささげたから」

クスクスと山本は笑っている。

黒い目の奥は、空洞になっていてまるで向こう側が見えそうなほど。

「お願い……」