「あのね、あのね」

あせっていてうまく言葉が出ないみたい。

あたしは後ろの扉から教室に入る。


ザッ


そんな音はしないのに、一斉にみんながあたしの顔を見た。

それまで騒がしかった教室が一気に静まり返る。


……え?


なに?

なんでみんなあたしを見るの?

たくさんの視線があたしに向いている。

瑠奈があたしの袖を引っ張る。

「黒板、見て」

小さな声が聞こえ、視線をそちらに向けた。

教室の前面にある大きな黒板。

そこには、黄色いチョークであたしの名前が書いてある。


『山本純子は泥棒です。人のお金を盗みます』

大きくそう書かれていた。