「わかんねぇんだよ!」
その手を払いながら、太一も叫んだ。

口からよだれのようなものが落ちたが、気にもせずに太一は顔をゆがめた。

「あんな……あんなにつぶれてちゃ。誰の顔かなんてわかんねぇよ!」

ヒッと瑠奈が私の腕をつかんだ。

千夏がまだ信じられないような顔をして、太一を眺めていた。

「そんな……」

「でも」

少し落ち着いたのか、太一の声のトーンがさがる。

「刑事が言ってた。部室にあったカバンとかは、渚の物らしい、って」

「電話してみます」

美鈴がスマホを取り出すと、渚に電話をかける。