千夏が何かに気づいたように、あたりを見回す。

「ねぇ、今日……渚は? 渚は来てないの?」

その声に激しく太一がセキこんだかと思うと、道端に嘔吐した。

水分が飛び散った。

私は太一の背中をとっさにさする。

「ウソですよね、太一さん」
声が震えた美鈴が尋ねる。

「たぶん、あれは……渚だった」

太一が口をぬぐいながら、そう言った。

目から涙がこぼれている。

「なによ!」
突然、千夏が大声をあげた。
「たぶん、ってどういう意味よ!」

太一の肩をつかむと、激しく揺さぶった。