ゆっくりとバッドを手に取る。

いつも範子が自慢している高いメーカーのバッド。

いくら高くても、使う能力がないなら意味がない。

「じゃあ、よーいスタート!」
そう言うと、純子は両手をパチンと合わせた。

私はしばらくそのバッドと純子を見比べていた。

純子は真っ黒な目で、ワクワクしたように口角をあげている。

「やってらんねーよ」

私は、純子に背を向けた。

そして、そのまま歩き出す。

「どうしたの? いつもみたいに暴力でスッキリしないの?」

「うるせえ!」

バッドを引きずりながら、声を荒げた。