じゃあ、教えてあげるよ。

私は、あたりをわざとらしく見回すと、範子に顔を寄せた。

「県大会は私がレギュラーになるそうです」

「なっ……」
狼狽して範子の目がせわしなく動いた。


そうそう、その顔が見たかった。


「同じポジションですから、先輩は補欠になるそうです」

声は申し訳なさげに、あふれてくる笑みを隠して言った。

範子はまだ信じられない顔をしている。

笑える。

「集合!」
キャプテンの声に、
「はい!」
威勢よく返事をすると、整備器具を端っこに置いて私は走り出す。


範子はまだその場で固まっていた。