「なぁ、お前らもあの刑事に言ってくれよ。あの大当たりの台を俺にもらえるようにさ」
そう言うおじいちゃんの言葉がどんどん遠ざかる。

気がつくと、私は太一に抱えられるようにしてその場を離れていた。


ゲームセンターの入り口にあるベンチに座らされる。

私の両側に、太一と瑠奈が腰をおろした。

ゲームの電子音が聞こえているが、それもどこか遠くで鳴っているよう。

私たちは黙っていた。

何か話をしたいけれど、声にならない。

「なぁ」

右に座った太一が、ようやく声を発した。

「……今のさ」

そこで言葉につまる。

私はゆるゆると太一の顔を見る。

太一は自分の足先に視線をやりながら、
「純子のお母さん、なのかな?」
と、自信なさげに言った。