「当たったとたんに、なんだか急にわめき出してよぉ。店内をなにかに追われるように走り回ったんだよ。そりゃあビックリしたぜ。店員が止めても、目に入ってないようで、ひとりで叫びまわって迷惑だよなぁ」

「……それから?」
緊張した声で太一が問うた。

おじいちゃんは、
「トイレ」
と、短く答えた。

「トイレ?」
私がその言葉を繰り返すと、
「ああ」
と、言いながらタバコに火をつけた。

白い煙が宙を漂う。

「トイレに逃げ込んだらしく、中からカギをかけちまった。中からすごい音が聞こえてよ」

そこまで言うと、おじいちゃんは眉をしかめた。