「なぁ、いいだろう? 俺、今日大負けなんだよ。やらせてくれよぉ」

鏡は私の目を見つめたまま、
「考えておきますから。もうしばらくお待ちください」
と、切り上げ口調で言うと、自動ドアの中へ走って行ってしまった。

「ねぇ、遙香ぁ」
泣きそうな声で瑠奈が私の袖をつかんだ。

私だってそうだ。


今、喪服って……。


答えられないまま、閉まる自動ドアを見ていた。

「すみません、おじいちゃん」

太一が、まだ恨めしそうに自動ドアのあたりを見ているおじいちゃんに声をかけた。

「いったい、なにがあったんですか?」

おじいちゃんは、太一を見て肩をすくめた。

「いい迷惑だよな。頭のおかしい女のせいで追い出されちまった」