純子は、いなくなったの……?

唯一の母親だもの。

さすがに殺しはしないのだろう。

ようやく安堵したアタシは、なんとか起き上がろうとするが、もがくだけで立ちあがれそうもなかった。

這いずるように、トイレの出口に向かう。

窓を越える体力は残ってそうもない。

なんとかドアまで来ると、右手を伸ばしてカギを開けようとする。

カギまでは届かない。

左手で体を起こそうとするけれど、たくさんの血ですべってしまう。


その時、ふっと体が軽くなった。

いつの間に来たのか、服の襟を純子が持って立ちあがらせたのだ。


……すごい力。