「お母さん……」

ゆっくりと右手を伸ばしてくる、それは、
「なんで! なんであんたがっ」

___純子だった。


尻餅をついた姿勢のまま、後ろに這ってさがる。

もう一度、純子の顔をみたアタシはさらに悲鳴をあげた。

純子の顔には目がなかったのだ。

真っ黒にえぐられて、ふたつの穴があるだけだった。

「ヒャアアア!」

ようやく力が入った足で、アタシは立ち上がると自動ドアに走った。

ドアは開かない。

停電だからじゃない。

手でこじ開けようとしても、ビクともしない。

ドアに映る背部。

ゆっくりと体を左右に揺らしながら、純子が近づいて来ているのが映っている。