「僕も、後悔ばかり。純子をひとりにしてしまったから、だからこんなことに……」

涙をにじませる男性の胸元には、『石田』と書かれている。


あれ……?


純子の苗字は山本のはずじゃ……?

私の視線に気づいたのか、男性は手のひらで涙をぬぐうと、
「聞いてないかな? うちは離婚しててね」
と、恥じるように顔を伏せた。


知らなかった……。


何か月も一緒にいたのに聞いたことがない。

それが少なからずのショックを与えた。

純子はやっぱり、私のことを好きじゃなかったの?

会場はそんなに広くはなかった。

弔問客はほとんどがクラスメイトで、長椅子は制服で埋め尽くされている。

ヒソヒソ話がいくつも起きて、それが雑音になって会場に響いていた。

「遙香」

声の先には太一がいた。

その横に私、そして瑠奈が着席した。