カサ立てにたたんだカサを置き、入り口に入ると40代くらいの男性が受付に立っていた。

憔悴しきった顔で、来る人たちに力なく頭をさげている。

クラスメイトは名前を書く必要はないらしいが、なぜか私はその男性に近づいた。

それは、私や瑠奈以外にはじめて純子の死を悲しんでいる人を見つけられたから。

吸い寄せられるように、私は男性の前に立つ。

目線を受付簿に向けていた男性が顔を上げた。

「あ……。君は……純子のクラスメイト?」
つぶやくように言う白髪交じりの男性に、
「はい。橘遙香、と申します」
と、お辞儀をした。

「純子……純子さんのお父さんですか?」

「はい……。いろいろとご迷惑をおかけしました」

その声の震えが、悲しみを物語っている。

「私こそ。純子さんの力になれなくて、申し訳ありませんでした」

素直に言えた。

瑠奈と同じだ。

あれからずっと自分自身を責めている。