「ただいま」

家のカギは開いていた。

ということは、お母さんがまだいるんだ……。

リビングに向かいながらも、その足取りは重くなる。

もう少し学校にいれば良かったな……。


キィ


扉を開けると、お母さんがソファで寝そべってテレビを見ていた。

今日はいつもみたいにお化粧をしていない。


そうか……。


今日は夜のお仕事がないのか。

「ただいま」
もう一度そう言う。

お母さんはあたしの姿をチラッと見ると、なにも言わずにテレビに視線を戻した。

「……」

部屋に行こうかとも考える。

でも、前はそれで怒られたことがあるから。