「遙香」

校門を出たところで、呼び止められる。

振り向くと、そこには千夏が立っていた。

一歩さがって、渚と美鈴も。

「なに?」

こみあがってくるモヤモヤを押さえながら、私は答えた。

この子たちが純子をいじめていたかと思うと、今にも殴りかかりそうな怒りがわきあがってくる。

千夏は、長い髪を手でいじくりながら、
「余計なこと、言ってないでしょうね?」
と、ほほえんだ。

「余計なこと?」

「事情聴取で聞かれたでしょ? 『いじめ』について」

「ああ……」

「私たちと純子は友達だったの。だから、あんまり憶測で言わない方が身のためだよ」

あくまで笑みを浮かべながら、千夏は言う。

ひょっとしたら、事情聴取を盗み聞きしてたのかもしれない。