医師はマスクを外すと、目線を下げた。

「残念ですが……、ここに来る前、救急車の中で死亡されていました」

ヒッという声が瑠奈の口から漏れた。

「蘇生を試みたのですが、ムリでした」

「そんな……」

兼子先生は両手で口を押えて後ずさりをした。

「……残念です」

深く頭をさげると、医師はまた扉の向こうに消えた。

誰もが黙って動けずにいた。

ただただ、お互いの顔を見やるだけ。

どうしていいのか分からないのだ。

「よいしょ」

間の抜けた声が聞こえて、お母さんが立ちあがった。

腕を組んだまま、私たちに近づく。

「で、どうすんのよ」