「それは……」

言葉につまる兼子先生を見て、お母さんは肩をすくめた

「どうでもいいけどさ、ここにいなきゃダメ? もう仕事行かなきゃなんだけどさ。指名客逃したら困るのよね」

足を組んで腕時計の時間を気にしている。

指名客、ということは夜の仕事をしているのかもしれない。


___嫌悪感。


瑠奈は今にも殴りかかりそうに真っ赤な顔をしていた。

その肩に手を置くと、ハッとしたように私を見て唇をかみしめる。

奥の扉が静かに開くと、医師と思われる男性が出て来た。

私たちを見ると、ゆっくりと顔を見回した

お母さんは気にする様子もなく、自分の髪の毛を持って髪先を眺めている。

兼子先生が前に出る。

「先生……」

その後の言葉は、かすれて出てこないようだった。