「いいから。ここは大人に任せて帰りなさい! 今は大変な時なの。あなたたちがいると余計に混乱するから」

「でも」

瑠奈がそう言いかけるのを聞かずに、先生は早足で去って行った。

振りかえる瑠奈と目が合う。

「追いかけよう」

私はそう言った。

このまま帰れない。

「うん」

瑠奈もうなずくと、先生が去って行った方へ歩き出す。

進んでゆくと、その先には『ICU』と書かれた矢印があった。

そこに運ばれたということだろう。

薄暗くなる廊下を右へ左へと曲がり、ようやく重厚な自動ドアの先にICUはあった。

何人かの先生がいる。

教頭先生と話をしていた兼子先生が、私たちを認めると、
「……あなたたち」
と、苦い顔をした。