「なんであたしの財布を純子が持ってんのよ」
そう言うがいなや、千夏はバッとあたしの手から赤い財布を奪った。

驚いて顔を見ると、クスクス笑っている。


なんだ……。


怒ってるのかと思った。

「違うの。忘れ物取りに来たら、ここにこれが置いてあったの」

「ふうん」
そう言うと、千夏は財布を開けて中身を確認する。


……あたしが盗んだって疑われている?


急に胸が苦しくなった。

なにか言い訳をしなくちゃ、と思うけれど言葉が出てこない。

でも、千夏は財布を元のように二つに折ると私を見てほほえんだ。

「ありがとう。探してたの」

「え?」