「あと少し……」

素早く扉に滑り込むと、中からカギを閉めた。

狭い放送室には機材と、ラックにならんだCDの数々。

椅子に座ると、目の前に簡素なマイクがあった。

ゆっくりと、室内を見回す。

天井付近にある、横に伸びた梁(はり)の部分で目が留まった。

制服のスカーフをほどいてそこに輪っかにして結ぶのにも、何の迷いもない。

むしろ、すがすがしい気持ち。


やっと、やっと……。


もう、あたしは笑っていた。

長くつらい旅がこれで終わるのだ。

涙は出なかった。

ノートを広げると、もう一度呪いの文章を声に出して読んだ。

あんなに震えていたのに、おだやかな湖のような心。


波はもう、立たない。