「CDを万引きしたようだね。……何か言いたいことはありますか?」

校長先生が静かに言った。

その目には優しさが見えた。

あたしの話を聞こうとしてくれた人に会えたのは久しぶりだった。


もう少し早かったなら……。


今、千夏たちのことを言っても、兼子先生はすぐに否定するだろう。

そしてあたしをさらに犯人扱いする。

あきらめたんだ。


もう、全部あきらめたの。


「何もありません。ご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」

驚くほど冷静な声が自分の口から出た。

「あのね、山本さん」

声色が気持ち悪い兼子先生。

そんな優しそうな声を作れるんだ。


本当は悪魔のくせに。