やがて響き渡るチャイムの音。

先生が入って来たのが、教室の音が急に静かになったのが分かる。

ゆっくりあたしは顔を上げた。

なるべく髪を頬に垂らして、腫れているのを隠した。

教科書に集中しているそぶりで、伏せ気味に顔をうつむき加減にして。

「もうすぐだから……」

何度もつぶやくことで、なんとか正気を保っている。

休憩時間になると、あたしはまた寝たフリでやりすごした。

誰もあたしには話しかけない。

たとえ、千夏たちにいじめられてなくても元々ない存在だったのかも。

4時間目が終わると、あたしはすばやくカバンを持って席を立った。

「ちょっと」

渚が教室を出てゆくあたしに声をかけたけど、聞こえなかったことにして走った。

今日だけは屋上には行けない。


渚が追いかけてこないことを確認すると、あたしは息をついた。