「でも、学校すぐじゃん」
瑠奈があごで後ろの方にまだ見えている校門を指す。

「大丈夫。私走って行ってくるから。先に帰ってて」
そう言いながらあたしはもう走り出していた。

「本当にいいの?」
遙香の声が聞こえた。

「うん! また明日ね」
手を振りながら走る。

校門を曲がるときに振り向くと、遙香と瑠奈の姿は逆光で真っ黒に見えた。
反対側の空には、まだ早いのに三日月がうっすら光っている。


この時、ひとりで教室に戻ったことを、あたしはずっとずっと後悔することになる。


だけど、その時はそんなこと知らないわけで……。