店員が学校に電話をするのを、あたしは呆然と見ていた。

もう、涙なんて出ない。

ショックというより、不思議でたまらなかったから。

学校には当番の先生しかいなかったらしく、店員が紙になにかをメモしている。

そこには『カネコ』と書かれ、携帯の電話番号らしき数字が続く。

電話を切った店員が、その番号を復唱しながらまた電話をかける。

「もしもし、兼子先生ですか? 私、駅前のCDショップの藤森と申しますが。ええ、はい、そうです。おたくのクラスの生徒が万引きをしましてね。___ええ、そう万引きです」

店員があたしをチラッと見て続ける。

「すぐに来てもらえますか? はい、生徒はここにいますから。そうです、おたくのクラスらしいです。ええ、お待ちしてますから」

兼子先生は、それから20分もしないうちに駆け付けてきた。

バックヤードに走って飛び込んできた先生は、あたしの顔を見るなり、

「やっぱりあなただったのね、山本さん!」
と、絶叫した。