正直、怖いから行きたくない。


だけど、足音の正体がわからないのも怖いから、階段まで行ってみよう。


どうしてこんな事を思うのか……。


怖かったら、確認なんてしないで布団を被っていれば良いのに。


なぜかそんな選択肢はないように思えて、私は廊下に出て、階段へと向かった。


足音は階段を下り切ったようで、一階の廊下から、ヒタヒタという素足の音。


その音が止まる。


私が後をつけている事に気付いたのか、一階で待ち構えるように。





……だ、大丈夫だよね。




鏡に映りさえしなければ、襲われなかったんだから。


きっと、お母さんがスリッパを履かずに、何か用事で部屋に行っていたんだ。


私の身に、おかしな事が起こっているからって、全部がおかしいわけじゃない。


偶然が重なって怖く思えるだけなんだと、自分に言い聞かせて、ゆっくり階段を下りた。


「お、お母さん?」


だけど怖くて声が震える。


階段を下り、廊下の奥にある脱衣所のドアが見えてくる……。


大丈夫、ドアは閉まってるから鏡には映らない。










いや、違う。


足音の主はどこに行ったの?


脱衣所に入ったわけでも、リビングに入ったわけでもないようなのに。