「う、うん。たしかにそうだね」

同意しながら思い出そうとするが、自分が内と外のどっちに引っ張られていたかなんて思い出せない。


でも、紗栄子の言う通り、陽菜は内側へと体を乗り出して転落した。


「陽菜が落ちるとき、『誰?』とか『やめて』と言っていましたよね?」

「そうだっけ…」

自信がなくなった私は首をかしげた。

「ちょっと待って」

駿が体を前に乗り出して両手をあごの下で組んだ。

さらに近くなる距離。

「それって、陽菜が誰かに落とされた、ってことか?」

紗栄子は言葉を選ぶように、しばらく間を置いてから、
「落とされた、っていうか…。私は引っ張られて落ちたように見えました」
と言った。