「シートベルトが…」

眉をひそめて駿がつぶやく。

「すぐに安全バーも上がってしまって、そこから陽菜は悲鳴をあげっぱなしでした」

「ああ。声は聞こえた」

思い出す。

そうだ、紗栄子の言う通りだ。

「陽菜の体は真ん中の柱の方にすべって行きました。そして椅子の手すりを乗り越えて横側から落下しました」

そこで紗栄子は私を見た。

「咲弥さん。おかしいと思いませんか?」

「え? なにが?」

急に見つめられて、どぎまぎしながら質問をそのまま返した。

「普通は遠心力が働くと、外側へ体は引っ張られるものじゃないですか。でも、あの時の陽菜は内側へ内側へと動いて行ってましたよね」