「おかしいと思いませんか?」

紗栄子がさっきと同じ姿勢のまま言った。

「なにが?」

駿が尋ねた。

私も紗栄子の方を見る。

「さっき、陽菜が落ちた時…」

げ。

せっかくの良いムードなのに、その話ですか。

聞きたくないけど、駿はうんうんとうなずいているので仕方なく私もそうした。

たしかに私もおかしいと思ったし。

「あんな落ち方するでしょうか?」

「あんな、って? 俺は紗栄子とかの後ろにいたからよく見えてないんだよ」

紗栄子はしばらく黙って駿を見ていたが、やがて話し出した。

「陽菜のシートベルトが急にはずれたんです。本人が1番驚いていたから、自分でやったわけじゃないと思うんです」