「乗り物に酔いやすいから。遠い昔に行ったっきりで、そのときの苦い思い出があってねぇ」

恥ずかしそうに笑った。

「でも、マスコミのお仕事だと車移動も多いんじゃないんですか?」

「え? ああ…。違うのよ」

首をかしげた。

「自分で運転する分にはいいの。予測不能な動きに弱いの」

「そうなんですか」

気分をほぐそうとして言ってくれているのがわかったけれど、気の利いた返事ができないままハーブティーを口に入れた。

「落ち着いたら、続きを話してくれるかな?」


続き…。


「・・・はい」

紙コップを机に置いて、思い出す。