「おかしい、いない」

駿が早足で歩きながら雅哉に言った。

「いないわけねーだろうが!」

怒鳴る雅哉。

どうしてよいのかわからないのだろう。

「外に出たのかもしれない」

駿が出口から飛び出してゆくと、雅哉もそれに続く。


「おかしいです」

紗栄子がまた言った。


ゆるゆるとそちらを見る。


言葉が出てこない。

「落ちたとしたらここにいるはず。でも、血のあともないのはおかしいです」