ぐらん、とバランスがくずれ前のめりになった。

そして。

「いやぁぁぁぁぁぁ!」


長い悲鳴を上げた陽菜の体が椅子から消えた。


すぐに鈍い音が小さく聞こえた。

怒号にも似た悲鳴が上がる。

それは、七海や萌絵。

いや、自分の口からも出ていた。

紗栄子は目を見開いている。

泣き声が後ろから前から。


落ちたの…?

本当に?

乗り主を失くした椅子が右へ左へ揺れながら回っている。

なにかの冗談かと思うが、時折見えるシート部に陽菜は、もういない。