陽菜は必死で元に戻そうと腕を伸ばして押す。

「なんでっ。なんで戻らないの!?」

ガタガタと音はするが、バーは動かないようだった。

「キャッ」

短い声を上げて、陽菜が椅子に倒れたかと思うと、右にあった体は左端まですべる。

「あぶない!」

左の手すりに頭をぶつける。

バランスを崩した椅子が、大きく半回転した。

陽菜は左の手すりにつかまって体制を整えようとしている。

「やめて! やめて!」

すぐに上がる悲鳴。

なぜか陽菜の左手が椅子の外に出ている。

じたばたと暴れながらも、外へ外へと。