「どうしたんでしょうか?」

紗栄子が眉をしかめる。

ガチガチと金属音のような音が聞こえた。

なんの音だろう?

「あ…」

見ると、陽菜の席の下にシートベルトの長い方がぶらさがっている。

それが風で椅子にあたって音を立てているのだ。

「ウソ! シートベルトがはずれてる!」

私の声に、後ろから萌絵が、
「ちょっと! やめてよ、そういう冗談」
と非難の声を上げた。

ガクンッと音がして、陽菜の席のバーが上に上がった。


声も出ない。