でも・・・なぜだろう?

こんなに暗いのに。

こんなに見えにくいのに。

どことなくこの風景が、学校の屋上を思わせた。


最上部まで上がりきった椅子は、鉄塔を中心にゆっくりと回転を始めた。

後ろから泣き声が聞こえたような気がした。

たしかにこれは怖いかも。

足が宙ぶらりんなのが恐怖をあおる。

やがてスピードを上げてまわりだすブランコ。

風は思ったよりも少なく、それでも遠心力で外側に体が引っ張られる。

紗栄子はまるでベンチに腰かけているように、まっすぐ前を向いている。

すごく姿勢がよい。