あの数時間の事を、どんなふうに話せばよいのだろう。

あまりにも現実味がなく、あれよあれよという間にこうして取材を受けている。

話し出さない私を見て、藤森さんは困ったように首をかしげた。

「じゃあ、私が聞くから答えてくれるかな?」

「はい」

それならできそう。

にっこり笑うと、藤森さんは宙を見上げた。

「はじめに…。あの場所にどうやって行ったか、それは覚えている?」


はじめに…。

記憶をたどる。

昨夜の出来事なのに、いろいろあったせいですぐには思い出せない。

たしか・・・あれは・・・。

「…バスです」