「記憶は鏡を見れば戻る。でも、どうしても認めたくないのなら、それでも仕方ないよ。どっちにしても、私たちは死んでいるんだから」

「・・・」

少しずつ、気持ちが落ち着いてくる。

なにかにあやつられるように、私は右手を差し出した。

その手に下沼さんが、鏡を渡す。

ねこのキャラクターが描かれている。


・・・これは、私の鏡だ。


震える指先で、私はその鏡を開いた。

ゆっくりと自分の顔の前に持ってくる。

薄暗い照明の中、映ったその顔は・・・。

「・・・ああ」



そこには、下沼さんが映っていた。