呼吸する自分の息しか聞こえない。


やがて、フッと下沼さんの表情がゆるんだ。


大きく息を吐くと、
「もう、なに言ってるんだか」
と、軽い口調になって下沼さんは言った。

「・・・」

そのまま私の両手をその手がにぎった。

びっくりするほど冷たい。

引っこめそうになるが、マヒしているのかされるがままになる。

下沼さんは、私の顔をまたのぞきこんだ。

そして、言う。

「これは、あなたが望んだことじゃないの」

「えっ?」

「全部、あなたが望んだことをしたんだよ?」