少しずつその表情が見えてくる。


「下沼さんだ…」


駿がツバを飲み込む音がした。

私もよく見てみるが、暗い部屋ではイマイチわからない。

左右に揺れながら、長い髪がそれにつられて右へ左へ。

「まてよ!」

その声にハッとする。

下沼さんの向こう側に雅哉の姿が見えた。

その動きを止めた下沼さんがゆっくり雅哉を振りかえった。

私の場所からでは、後ろ姿になる。


長い髪が濡れていた。

海から上がったかのように、しずくが落ちている。