「下沼ぁ!」

体全体で怒鳴った雅哉。

鏡が震えるかと思うほどの声量だった。

「お前があんなひどいことしたのかっ!」

少女は聞こえていないのか、そのまままっすぐ歩いて来る。

「そこで待ってろよ!」

そう言うが否や、雅哉が駆けだした。

少女のところへ行くつもりなのだろう。

「雅哉!」

駿の声にも振り向かず、数枚隔てたその場所へ向かうために左へ曲がって見えなくなる。

すぐにガラスにぶつかったのか、ガンッという音が聞こえた。

「雅哉君!」

そう叫んで追いかけようとしたところを、駿の腕に止められる。 

驚いて振りかえると、すぐそばに駿の顔があった。