私もポケットの中を改めて探るが、やはり何も入っていなかった。

でも…。

高校生から私物を盗んでも、そんな高価な物は持っていないだろうに。


バスには私たちしか乗っていなかったの?

他にも人がいたのならその人たちはどこに行っちゃったんだろう・・・。

その時。

暗闇の向こうから、

「おーい」
と声が聞こえた。

七海がその声の方に向かって、
「こっち!」
と声を出した。

「あ、こっちか」

そう言いながら姿を現したのは、七海の彼氏の雅哉だった。

高校2年生にしてはずば抜けてガタイが良くて、『番長』とあだ名をつけられている。